ニュースリリース
2024年9月26日 11時00分
【ハラスメント意識】ハラスメント意識の高まりによって「働きにくくなった」「職場が暗くなった」と感じる管理職・中間管理職が多いことが判明。ハラスメント防止研修は「実施されたことがない」が3割
社内のハラスメント相談窓口が有効に機能していると回答した方は3割にとどまり、相談窓口を利用した人は1割強とわずかしかいない結果に
一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会(所在地:東京都千代田区)は、20代〜60代の会社員(正規雇用)を対象に、「ハラスメント意識」に関する調査を実施しました。
ハラスメントには「パワーハラスメント(以下、パワハラ)」や「セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)」のほか、「マタニティハラスメント(妊娠や出産、育児に関する不当な扱いや嫌がらせなど。以下、マタハラ)」や「カスタマーハラスメント(顧客が企業に対して理不尽な言動やクレームをすること。以下、カスハラ)」といった言葉が飛び交っています。
厚生労働省は、2022年4月以降はすべての企業に「ハラスメント相談窓口」の設置を義務付けるように法改正を行ったこともあり、職場でのハラスメントに対する社員の意識も高まっています。
では実際に、職場環境やハラスメントに対する社員の意識は、どのように変化したのでしょうか。
そこで今回、ハラスメントアドバイザー認定試験を開催する、一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会(https://www.harassment-counselor.com/)は、20代〜60代の会社員(正規雇用)を対象に、「ハラスメント意識」に関する調査を実施しました。
<調査概要>
「ハラスメント意識」に関する調査
【調査期間】 | 2024年5月2日(木)〜2024年5月7日(火) |
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【調査方法】 | リンクアンドパートナーズが提供するPRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査 |
【調査人数】 | 1,049人 |
【年代内訳】 | 20代202人、30代214人、40代214人、50代219人、60代200人 |
【役職別内訳】 | 役員12人、部長、次長級128人、課長、課長補佐級169人、係長級119人、主査、主事級106人、特になし493人、その他22人 |
【企業規模内訳】 | 従業員1,000人以下648人、1,000人以上401人 |
【調査対象】 | 調査回答時に20代〜60代の会社員(正規雇用)であると回答したモニター |
【調査元】 | 一般財団法人日本ハラスメントカウンセラー協会(https://www.harassment-counselor.com/) |
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
調査結果サマリー
ハラスメント意識の高まりによって働きやすくなった?それとも?
はじめに、ハラスメント意識の高まりによって感じている働き方の変化についてうかがっていきたいと思います。
その結果、部長・次長級、課長・課長補佐級、係長級の中間管理職層では「働きにくくなった」「職場が暗くなった」「効率的に仕事ができなくなった」などの回答が多く、ポジティブな変化だけでなくネガティブな変化も感じている割合が多い結果になりました。
半数以上がハラスメントを受けた経験があると回答。その時にとった行動とは?
次に、ハラスメントを受けた経験について聞いたところ、下記のような結果になりました。
不当な嫌がらせを受けたなど(ハラスメントに該当するものかは不明)(15.1%)」「セクハラ(セクシャルハラスメント)(10.9%)」などを受けたことがあると示されました。
では、具体的にどのようなハラスメントを受けたのでしょうか。
■実際に受けたことがあるハラスメントとは
【パワハラ】
【セクハラ】
【カスハラ】
などの回答が寄せられました。
指導の範囲を超えた叱責や時間外労働の強要などといったパワハラを受けた経験があるようです。
セクハラについては体を触ってきたり、性的な発言をしてきたりといった意見が見られました。
また、卸売・小売業やサービス業の方のなかには、お客様からレジで怒鳴られるといったカスハラを受けたことがあることが示されました。
では、パワハラ、セクハラ、マタハラを受けた際どのような行動に出たのでしょうか。
そこで、「パワハラやセクハラ、マタハラを受けた後(カスハラは除く)、どのような行動を取りましたか?(複数回答可)」と質問したところ、「特に何もしなかった(33.6%)」「上司に相談した(20.4%)」「同僚に相談した(18.6%)」と、何もしなかった方が最多という結果になりました。
また、「社内の相談窓口を利用した」は、専門機関として設置されているにも拘らず12.3%で、「上司に相談した」「同僚に相談した」より少なく、「友人や知人に相談した」と同数となり、予想以上に少ない結果になりました。
ハラスメントに関する研修はどのくらい実施されている?
実際にハラスメントを受けたことがある方の割合などが明らかになりましたが、では、ハラスメント防止研修はどの程度実施されているのでしょうか。
その結果、「実施されたことがない(33.5%)」と回答した割合が最も多く、ハラスメント防止研修を実施していない企業が多いことがわかりました。
また、年に1回以上ハラスメント防止研修が実施されているとの回答は全体の約32.4%となり、まだまだ企業の教育やハラスメント防止研修は十分と言えない様子がうかがえます。
実際にハラスメントはどのくらい起きている?社内のハラスメント相談窓口の評価は?
次に、直近3年以内で身の周りに起きたハラスメント(パワハラやセクハラ、マタハラなど)の発生頻度についてうかがったところ、下記のような結果になりました。
従業員規模31人~50人、51人~100人の回答を見てみると、「毎月・日常的に起きている」の割合が高いことがわかりました。
また、5,000人~100,000人規模の大企業の10%以上でも、「毎月・日常的に起きている」ハラスメントが発生しているようです。
100,001人以上の企業では、「毎月・日常的に起きている」は5%に減少しますが、企業規模が大きくなればなるほど、「全体でのハラスメント発生が気づかれにくい」といった可能性が示唆されました。
2022年4月以降「ハラスメント相談窓口」の設置が義務化となりましたが、社内のハラスメント相談窓口は有効に機能しているのでしょうか。
その結果、30.7%がハラスメント相談窓口は「有効に機能している」と感じていますが、「機能していない」が9.3%、さらには「相談窓口が設置されていない」が17.5%に上り、ハラスメント相談窓口が浸透していない実状が浮き彫りになりました。
先程の調査結果にもあったように、利用率も12.3%と8人に1人程度しか利用していません。
【総括】
今回の調査結果で、ハラスメント意識が高まったことによる働き方の変化や、ハラスメント防止研修の実施頻度などが明らかになりました。
ハラスメント意識の高まりによる変化について、一般社員、主査・主事級の社員はあまり敏感に感じ取っていないようです。
一方、管理職はその変化に敏感で、上級管理職(役員、部長・次長級)は「働きやすくなった」「職場が明るくなった」「効率的に仕事ができるようになった」といったポジティブな変化を感じていることが示されました。
同時に、部長・次長級、課長・課長 補佐級、係長級の管理職全般は「働きにくくなった」「職場が暗くなった」「効率的に仕事ができなくなった」など変化をネガティブに感じている割合も多いようです。
ハラスメントを経験した方の割合は半数以上に上り、感情的な叱責や時間外労働の強要などのパワハラを受けたことがある方は約4割、体を触られたり性的な発言をされたりといったセクハラを受けたことがある方は1割という結果になりました。
ハラスメントを受けた際は上司や同僚に相談した方も約2割ずついますが、社内に設けられている相談窓口を利用した方は12%にとどまり、特に何もしなかった方が3割以上と最多のようです。
また、ハラスメント防止研修について実施されたことがないといった回答が3割以上に上り、年に1回以上実施しているのは約4割にとどまる結果になったことから、ハラスメント防止研修の実施頻度は低く、まだまだハラスメントに対しての対策がしっかり行われていない様子がうかがえます。
さらに、ハラスメント発生率は31人~100人規模の企業が高く15%~20%ありますが、5,000人~100,000人規模の大企業でも10%以上の企業でハラスメントが発生しています。
ハラスメントを受けた際に利用できる社内の相談窓口が有効に機能していると感じている方は3割いるものの、「相談窓口が設置されていない」といった回答が18%、「機能していない」が10%、「詳しく知らない」が21%と相当数が見られました。
このような結果から、ハラスメント意識の高まりによって「働きやすくなった」など企業全体に良い影響を与えているものの、「働きにくくなった」「職場が暗くなった」などネガティブな変化を感じている中間管理職層が多いことから、中間管理職層のハラスメントに対する理解が課題になってくるかもしれません。
ハラスメントをどう取り扱うかといった点が重要になることから、研修などを実施して理解を深める必要があると言えます。